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京大水産実験所・益田玲爾さんの若狭湾水中散歩68
−「ギンカクラゲ」− 小さな個体が多数集まり形に

 冠島周辺でエチゼンクラゲの調査のために潜水していたら、牛乳瓶の紙ぶたくらいの大きさの、花びらのような物体が次々と流れてきた。ギンカクラゲである。  ギンカクラゲには、カニの甲羅と同じキチン質でできた円盤状の殻があって、これで海の表面を漂っている。写真ではどう見ても1匹のクラゲに見えるが、実は小さな個体が多数集まってできたもので、群体と呼ばれる。群体のクラゲでは、触手となって餌をとる個体と、これを消化する個体とがそれぞれいて、全体としてクラゲの形を作っているのだそうだ。  ギンカクラゲの触手の部分は、通常は青く輝いて見える。しかし今回冠島周辺で見つけたものは、みんな白色だった。弱っていたのか、早々に冬支度していたのか、理由はよくわからない。このクラゲ、おとなしそうに見えて、触手の毒はかなり強烈で、刺されると呼吸困難に陥ることもあるという。  クラゲを漢字で書く際、水母という字が当てられる。いちばん普通に見られるミズクラゲという種類では、その名の通り95%もの水分を含んでおり、海岸に打ち上げられたものは、干からびるとほとんど跡形もなくなってしまう。またクラゲを海月と書く場合もある。先日、海の上に浮かぶ満月を眺めていて、その移ろいゆく美しさに心を打たれるとともに、クラゲを海に映った月にたとえた昔の人の感性にたいそう共感をおぼえた。「もののあわれ」というやつだ。  さて、ギンカクラゲが多く発生した年の冬、海岸を散歩してみると、このクラゲの円盤状の殻が砂の上に落ちているのにしばしば出くわす。これが、その名の通り錆びた100円玉か500円玉にそっくりなので、ついだまされて拾ってしまうのは筆者だけではあるまい。一瞬得した気がしてあとから損した気がするのは、これまた別の意味であわれである。
写真=冠島と小島の間にあるチョウベイグリという岩場の周辺にて、水面を漂うギンカクラゲ。円盤の直径は3センチほど
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