トビヌメリはネズッポ科の魚で、近縁のネズミゴチとともに、ネズッポ、メゴチ、ガッチョ等、いろんな愛称で呼ばれる魚だ。釣りや潜水観察の対象としても食材的にも、地味ながらも親しまれているキャラである。舞鶴湾や高浜町の内浦湾など少し奥まった湾にはネズミゴチが多く、写真の伊根のように外洋に面した砂地にはトビヌメリが多い。丹後半島の海水浴場でシュノーケリングをしていると、トビヌメリがその名の通り海底をひょこひょこと飛び跳ねているのをしばしば見かける。この小さなおちょぼ口で、海底の貝や小エビなどをついばんで食べているのだろう。臆病な魚なので、近づくとすぐ飛び跳ねて逃げてしまう。
「キス釣りをしていたら外道でコチが釣れた」といった場合、本物のコチ(マゴチ)ではなく、これらネズッポ科の魚である場合が多い。ちなみにマゴチはむしろカサゴに近い魚で、口が大きく、魚食性であり、夏場に洗いにして頂くと絶品の、文句なしの高級魚である。もっとも、ネズッポとさげすんであなどるなかれ。江戸前の天ぷらのネタとして、ネズッポは大変重宝されている。ぬめぬめするからといやがらず、釣れてしまったら潔く食べてあげよう。
ネズッポと同じようなところにいるシロギスは、海底から少し離れたところを群れですいすい泳いでいる。だから、キスを釣りたいのにネズッポが釣れてしまう人は、心持ち速くリールを巻き上げるようにすれば、ネズッポにエサをとられずにすむ。
さて、来年はネズミ年。ネズミ講にネズミ算にネズミ男にネズミ捕りと、ネズミから連想される言葉にあまり良いものはみあたらない。とはいえ、このネズッポをイメージしつつ、地道でマメで安全運転な1年にして、研究に、プライベートに成果を挙げていきたいと思う。
写真=伊根町カルビ浜の水深3メートル、アマモなどの海草の生える砂地で跳ねていた体長17センチほどのトビヌメリ。「チュー」とでも鳴きそうな顔である
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