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京大水産実験所・益田玲爾さんの若狭湾水中散歩72
−「マツカサウオ」− ぽっと青白い光を点灯

 マツカサウオは、見ての通り、松ぼっくりに似た形をしているのでその名がある。通常岩陰にいて、光が当たると黄金色に輝く姿が美しい。腹びれには長い突起があって、大きな魚に襲われたときは、これを立てて抵抗するのだろう。  この魚の特徴として有名なのは、口の下に発光器を持つことだ。でも、何も自分で電気を起こしているというわけではなく、水中で光を放つ微細な生物、発光バクテリアを口の下の袋に蓄えて光を放っている。夜間、この光に引き寄せられて集まってきた小さなエビやカニなどを餌として食べるのだそうだ。学生時代、下宿に置いた水槽で、このマツカサウオを飼っていたことがある。夜、部屋の灯りを消してから、水槽の壁をトントンと叩くと、マツカサウオがぽっと青白い光を点灯させるのは、とても幻想的だった。でも水槽で長く飼うと、だんだんと発光しなくなってしまう。これは、水槽内では発光バクテリアを取り込めないためであろう。  このマツカサウオ、本来は暖かい海に棲む魚で、沖縄や静岡で潜っていて何度か見たことがある。若狭湾では、数年前の夏に宮津市島陰で見て以来だった。ところが写真の魚は、今年の2月下旬に瀬崎にいたもので、見つけたときは驚いた。この冬は季節の到来が遅れていたようで、暖かい海の魚が年明け以降も多く見られた。しかし南方系の魚は、水温12℃を切ると、極端に動きが鈍くなる。寒さで命を落とすまでもなく、タコにでも食べられてしまう運命だろう。  見かけによらずこのマツカサウオ、大変に美味な魚だという。温暖化に伴い、若狭湾でも南方系の魚が増えている。南の海からやってくる魚が、旨いのか、有毒なのかといった情報は、海辺に暮らす者としては、文字通り死活問題である。そう思って見ると、熟したパイナップルに似てなくもないこの魚、甘くて旨そうな魚として記憶しておこう。
写真=体長8センチのマツカサウオ。舞鶴市瀬崎の水深6メートルにて。撮影時の水温は10.2℃
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