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京大水産実験所・益田玲爾さんの若狭湾水中散歩73
−「カメノテ」− カメ似でも味はカニ似

 カメノテは、エビやカニと同じ節足動物の甲殻類に含まれる。生まれてしばらくはプランクトンとして波間を漂い、ある時期になると波当たりの良い岩場に着底し、そこで固着生活を始める。写真で白っぽく見えるのは石灰質の殻で、その根元には細かい鱗で覆われた部位があり、全体として、岩のすき間から亀が手を伸ばしているように見える。写真右寄りで、夏の花火の余韻のように開いているのは触手で、これにより流れてくるプランクトンを食べている。  カメノテに限らず、海にはあまり動き回らない動物が多い。これは、海ではじっとしていても餌が流れてくるためだ。それに対し陸上では、餌の方からやってくるということはあまりないので、陸上の動物はせわしく動き回る必要がある。  エビやカニと近縁なだけあって、カメノテはカニに似た味がする。九州の大分で調査していた際、漁師さんに勧められて岩場のカメノテを採って食べたことがある。味噌汁に殻ごと入れると良いだしが出るし、塩ゆでして殻をむしって食べると、麦焼酎が良く進んだ。大分では、スーパーでも普通にカメノテを売っていた。  以前、学生と話をしていたら、瀬戸内海の島へ行って釣った魚を食べてキャンプ生活を送ろうとしたら、魚がまったく釣れず、カメノテばかりを食べて過ごした、という話を聴いたことがある。主食にするには少々わびしい。でも、食べられる動物だと知っておいて損はない。岩からはずすときは、マイナスのドライバーで根元から必要な数だけはずしてあげよう。カニの身に相当する部分は根元につまっているので、その方がムダにならない。そもそもこの生物、最初に名前をつけた人が「カニノテ」とでも命名していれば、もっとみんなに好んで食べられ、岩場では採り尽くされていただろう。少々気味の悪い名前で丁度よかったのかもしれない。
写真=岩のすき間に群生するカメノテ。水深10〜20センチほど。磯遊びの合間に見つけてみたい
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