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京大水産実験所・益田玲爾さんの若狭湾水中散歩74
−「アカモク」− 海の浄化に一役買う

 アカモクはホンダワラ科の海藻で、日本沿岸の内湾の岩場に生える。海底から樹木のように伸び、水面に達した部分は横に拡がるため、初夏の若狭湾沿岸では、しばしば湾の一部をこのアカモクが覆い尽くす。繁茂した海藻の中で潜ると、水中マスクや足ヒレに海藻がからまって泳ぎにくい。海から上がれば頭から海藻がぶら下がっていたりして、海岸で遊ぶ子供らに怖がられ、犬にひどく吠えられる。  アカモクをはじめとする海藻は、春先から2、3カ月の間で、水中の無機物と二酸化炭素と初夏の陽射しを糧として、数メートルの長さにも成長するため、海の浄化に一役買っている。海藻の林は、メバルやハゼなどの稚魚たちにとって格好の隠れ家となっている。波でちぎれたアカモクは、流れ藻として沖合を漂流し、イシダイやブリなどの稚魚のすみ家にもなる。そして自然界での役目を終えて砂浜に打ち上げられたアカモクは、赤く変色するため、この名があるのだろう。  アカモクには雄と雌の株がある。写真左のサヤインゲンのような形をした部位は雄の生殖器で、ここから精子が泳ぎ出る。一方、写真右の筆のような形の部位は、雌の生殖器で、精子がここに泳ぎ着いて受精すると、卵が放出される。海藻の生活史は、実に動物的である。  アカモクには豊富なミネラルに加えて、フコイダンが含まれている。フコイダンは、抗ガン作用で注目されている物質のようだが、個人的にはその排出機能に興味がある。日常の食事で知らずのうちに蓄積しているかもしれない重金属その他の有害物質を、効率良く排出してくれるとされるのが、このフコイダンである。  ゆでたアカモクを刻んで三杯酢にすると、納豆よりも粘りが出て、モズクのような風味と、山芋千切りの食感が楽しめる。味噌汁に入れると、なめこ汁風のとろみがでる。スパゲッティーにからめたものは、青のりに似た風味がして絶品であった。若狭や丹後の海で獲れた海藻を日々の食事に取り入れて、健康で文化的な生活を送りたいものだ。
写真=水深5メートルから生えるアカモクの先端近く。水深は1メートルほど。左が雄、右が雌の株である
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