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京大水産実験所・益田玲爾さんの若狭湾水中散歩81
−「シロウミウシ」− 無用の中の有用さ秘める

 ウミウシは、巻き貝の殻が退化したような生きもので、軟体動物の一員だ。写真のシロウミウシで、左に出たツノのようなものは触角、右のしっぽみたいなものは呼吸をするためのエラである。エラが体の後ろにあるため、ウミウシの類を後鰓(こうさい)類とも呼ぶ。ウミウシにはあざやかな模様の種類も多く、ダイバーの間に根強いファンがいる。個人的には海の中を自由に泳ぐ魚たちの方が好きなので、筆者にはウミウシの魅力がよくわからない。以前、沖縄の離島でダイビングしたとき、チャーミングな魚がいくらでもいる中、ガイドさんがしきりとウミウシを見せたがるのには閉口した。  ウミウシは、英語ではsea slugと呼ばれる。直訳すれば、ウミナメクジということになる。ナメクジに見立てる英語の即物性よりは、牛に見立てる日本語の感性に軍配を挙げたい。  若狭湾に多くの種類のウミウシがいる中、おそらく一番普通に見られるのはアオウミウシ、それに続くのが、このシロウミウシであろう。あざやかさではアオウミウシに劣るものの、「牛らしさ」という点で、このホルスタインばりの模様のシロウミウシにかなう種類はいるまい。  殻も持たず、動きものろいうえ、目立つ模様をしているのに、外敵に食べられずにすんでいるということは、ウミウシには当然毒がある。だから、海鮮闇鍋をするときに、ウミウシを入れてはいけない。つくづく役に立たない生きもの、とあなどるなかれ。このウミウシたち、意外な活躍の可能性を秘めている。医学や生化学の研究者は、ウミウシから抗ガン剤などの有用成分を抽出できないかと熱心に研究している。いつどんな形でお世話になるかわからない、と考えれば、無用とも思える生物の大切さが見えてくる。
写真=体長3センチほどのシロウミウシ。2008年6月、舞鶴市竜宮浜の水深3メートルにて。あまりに牛っぽいので、たくさん集めて緑の海藻の上にならべ、「ウミウシの海洋牧場!」なんてやってみたくなる
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