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京大水産実験所・益田玲爾さんの若狭湾水中散歩83
−「ムラソイ」− 骨まで愛してあげよう

 ムラソイは本州沿岸の浅い岩場で普通に見られる魚だ。ムラソイを含むメバル属の魚たちは、卵ではなく仔魚を産む胎生魚である。真冬に生まれた仔魚は、しばらく沖合を漂う生活を送ったのち、春先に海底へ降りてくる。したがって、若狭湾沖で冬にプランクトンネットを曳くと、ムラソイの仔魚が多く採集される。また、京大大学院生の大畑君によれば、今年の1月に舞鶴湾内で採集されたミズクラゲの胃の中から、ムラソイの仔魚が見つかったそうだ。クラゲに食べられてしまうとは、漂う生活も楽ではない。  写真右は、着底直前とみられるムラソイである。この写真のムラソイ、筆者が撮影のために追い回すうちに、海底に降りてしまった。ムラソイの立場になってみると、「なにやら巨大な敵に追いかけられたときに、ちょうど良い岩場があったので着底した」といったところか。  夏場の若狭湾の岩場でシュノーケリングすると、波当たりの良い岩の隙間でふんばっている10センチ前後のムラソイをしばしば見かける(写真左)。じっとしていることの多い魚なので、タモ網ですくえたりもする。  学生時代、海辺でキャンプしていて、ムラソイをつかまえたことが何度かある。その場で刺身にすると、身が固すぎてあまり旨くない。ところが家に持ち帰って翌日以降に食べると、大変美味なので驚いた。魚の旨み成分の主役は、タンパク質が分解されたアミノ酸である。魚によっては、とれたてよりも、少し時間をおいた状態のほうがおいしいのはこのためだ。  ムラソイのようにゴツゴツした魚は、切り身にすると食べられる部分が少ない。そこで、小さいものなら丸ごと煮付けにするとよい。大きければ三枚におろして刺身かムニエル等で頂いたあと、頭と中骨でだしをとって味噌汁かスープにする、というのがお勧めだ。素敵に美味な魚は、骨まで愛してあげよう。
写真右=着底直前、体長1・5センチのムラソイ稚魚。2004年3月、舞鶴市瀬崎の水深1メートルで撮影
写真左=体長約12センチのムラソイ未成魚。2007年8月、宮津市島陰の水深1メートルで撮影

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