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京大水産実験所・益田玲爾さんの若狭湾水中散歩90
−「ヒラタブンブク」− 茶釜に化けたウニ?

 今年の春、中舞鶴にある潜水作業会社の社長さんから、「小橋の港で集めた砂の中から妙な生き物がようけ出てきた。ネズミみたいに、もぞもぞ動きよる。ちょっと見に来んか。」という電話をいただいた。電話の説明から大体見当がついたが、現場を訪ねてみて確認できた。ヒラタブンブクといって、ブンブクチャガマと呼ばれるウニの仲間である。普通のウニは、外周が丸い形をしている。ところがブンブクチャガマの類は前後に伸びているため,あまりウニらしくない。専門家はこれを、歪形(わいけい)ウニと呼んでいる。上から見るとハート型をしているため、英語ではheart urchinと呼ぶ。英米人にはハートに見えるのかもしれないが、日本人である筆者にはやはり、昔話に出てくるタヌキの化けた茶釜に似て見える。  毎年シュノーケリングをしている宮津の島陰で、今年は例年になくこのヒラタブンブクがたくさん見られた。通常は砂の中にもぐっているが、隠れた場所は盛り上がった砂の形でわかる。そこを砂ごとすくいとると、このウニが出てきて、手のひらの上をもぞもぞと動く。砂の上に放してやると、かなりのスピードで走り回ってから、砂にもぐる。岩場でじっとしている他のウニたちとは、随分と違ったふるまいである。  今年はこのヒラタブンブクが大発生しているようだ。沖の方で網を曳いても、かなりの数がひっかかる。ウニの仲間とはいっても、食べて旨い種類ではなく、増えてもあまりうれしくない。こんな生き物がなぜ大発生するのか、理由はわからない。昔からいたものなのか、また数年に一度は大発生したものなのか。図鑑では相模湾から西太平洋に分布とあり、南方系の種類である。したがって大発生の背景には、海底で徐々に進行している温暖化の影響もあるだろう。また、捕食者である巻き貝が底曳き網等の影響で減ったことも大発生の理由に挙げられる。まずは地道に観察し記録することが、諸々の疑問の解決への第1歩にはなるだろう。
写真=海底をはう8センチほどのヒラタブンブク。2009年8月、宮津市島陰の水深1.5メートルにて撮影。乗り越えようとしているのは、死んだヒラタブンブクの殻である
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