荒天の続いたあと、大学院生を連れて京都府漁連のセリ場へ行った。大漁のメジナを前に漁師さんが、「海がシケると、ツカヤ(メジナ)やヨネズ(キジハタ)なんぞの磯の魚がよう網に入るんや」と教えてくれる。そんな中、トロ箱に数匹入った見慣れない魚を指して院生が、「この魚、何ですか」と尋ねたのが、写真のタカノハダイである。
タカノハダイは、太平洋側の磯ではごく普通に見られる魚だ。図鑑には、あまり旨くない、と書いてある。それを知っていながら、学生時代、離島でのキャンプ中につかまえて食べてみたことがある。味噌焼きにでもすればいけるかな、と思って試したところ、なんとも言えぬ磯臭さがあり、不味だった。
そもそもダイバー同士で飲んでいて、好きな魚は何か、といったときに、タカノハダイを挙げる人に会ったことがない。白地に茶色のストライプが斜めに入り、しっぽだけ水玉模様というのは中途半端なデザインだ。しかも味が悪いとくれば、話がヘタで、シャツとネクタイの柄のあっていない大学教員、っていうところか。なんだかタカノハダイに同情してしまう。魚の味も、所変われば変わるものなので、日本海に来たタカノハダイは案外美味なのかもしれない。今度食べてみよう。
さて、その日漁連に来たのは、エチゼンクラゲをいただくためだ。院生の宮島さんは、カワハギにクラゲを食べさせる実験をしている。なじみの定置網船の大将は、「カワハギの食うエチゼンクラゲの量なんぞ、知れとるって」と言いながらも、快くクラゲを分けてくれた。同じ船のベテランの漁師さんはまた、「タイもクラゲを食うとるぞ」と教えてくれる。漁師さんたちに教えられ、また潜水中に様々の磯魚がクラゲを食べるところを見てきた筆者の、最近思うこと。クラゲだらけの海から、魚のゆたかな海にしてゆくには、魚たちに住みやすい磯の環境を取り戻すことが先決なのではないか。
写真=体長25センチほどのタカノハダイ。2003年10月、高浜町音海の水深3メートルにて
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