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京大水産実験所・益田玲爾さんの若狭湾水中散歩99
−「コモンフグ」− 小粋な小紋まとう

 梅雨の合間の晴れた日に、某国営放送の番組ディレクターからeメールが届いた。「添付した写真はクサフグでしょうか」という問い合わせなのだが、どう見てもコモンフグである。大河ドラマの直前に放送されている動物番組で、クサフグの特集を予定しており、これまで産卵風景や川をさかのぼる様子などを取材してきたが、普段のクサフグの様子を撮影しようとすると案外難しいとのこと。さっそく彼らの撮影現場に行き、また映像を見せてもらうと、半分くらいはコモンフグの映像が混じっていた。  クサフグとコモンフグは紛らわしい。クサフグは砂地、コモンフグは海藻の生えた場所をより好むものの、基本的に同じような場所にいる。体色は、クサフグは緑褐色、コモンフグは茶褐色であるが、どちらにも白い斑紋があり、かつ変異が多い。一番簡単な見分け方として、クサフグは眼の下が腹と同じ白色であるのに対し、コモンフグには眼の下にも茶色地に白の斑紋がある。コモンフグの名前は、細かな模様の着物である小紋からきているのであろう。意外に小粋なネーミングである。  以前、大学で講義をした折、「どんな魚でも料理するんですか」と質問されたことがある。講義では、魚の水中写真を見せてその生態について語ったあと、しばしばその魚を料理した写真を披露するため、学生からそんなツッコミを入れられてしまう。「フグ調理師の免許は持ってないので、フグの料理はできません」と答えておいた。コモンフグは美味とはきくが、そんなわけで食べたことはない。  水産実験所で行う臨海実習では、仕掛けた網やカゴでコモンフグが非常に多く採集されるため、この魚のスケッチや解剖をする学生が毎年いる。フグの解剖がきっかけで、研究者になる子もいれば、フグ調理師になる子もいてくれれば、などと思いながら実習生たちを見守る夏が始まる。
写真=2007年1月、舞鶴市長浜の水深4メートルで漂うコモンフグ
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