このシーズンの楽しみは、桜の開花とともにやってくる「春先子持ちモンゴイカ」です。この時期の子を持っているモンゴイカは身も柔らかく、甘くてとても美味しいのです。しかし、産卵してしまうと身も硬くなり味もグッと落ちてしまいます。ですから、今しかタケウチのメニューには載りません。
身の美味しさもさることながら、このモンゴイカで大変貴重なのが「イカスミ」なのです。このイカスミですが、ほのかな海の香りに内臓の香りがミックスし、卵黄のようなコクをもつ非常にスグレモノの食材なのです。
しかし、このイカスミの入った墨袋の取り出しには、外科医師並みの手先の技術と神経を持ってして挑まないとダメで、不覚にももし墨袋を破ってしまおうものならば(破れて墨がトローッと流れ出す瞬間のむなしさは言葉では言い表せません!)、周りにあるものを全て真っ黒に変えてしまい、後片付けに小1時間と非常に手間と神経を使う食材でもあります。
ところでこのイカスミの使い方ですが、タケウチでは魚のソースを作ったり、ホイップクリームに混ぜてイカのタルタルの上に乗せたり、リゾットを作ったりと、とても大活躍なのです。しかし美味しいだけではないのがこのイカスミの優れた所で、食べる時にも食べた後にも驚きと可笑しさでいっぱいの愛嬌満点の食材です。
例えばイカスミリゾットですが、食事中は口の中・周りが真っ黒になり、まさしく昔のコントに出てくるお歯黒みたいになります。そして食事後の翌日のトイレではドキッとするくらい真っ黒になります(大きい方が)。これをタケウチでは「モンゴイカのささやかな逆襲!」と言っています。
どうです? 1度食べてみたくなりませんか? 違った意味で。
竹内さんのホームページアドレスはhttp://www3.ocn.ne.jp/~takechef/
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