タケウチのディナーコースの最後には、3種類のデザートをお出ししています。今回はそのデザートの1つ、皆さんよくご存知の「プリン」に対するタケウチ的愛と苦悩のお話を…。
このプリンですが、昔からフランスでも子供からお年寄りまで、幅広く愛されているとってもポピュラーなお菓子ですし、お菓子作りの好きな女性でしたらチョチョイのチョイで簡単に作れてしまいます。ここなんです! この「簡単に作れる」ということが料理人にとってはヒジョーに難しいことなんです。「簡単なことほど難しい」。ちょっと哲学的な表現ですが、もう少しわかりやすくお話します。
プリンを構成する食材は4種類。「卵、牛乳、バニラ、砂糖」。ではこのシンプルな食材でどうプリンの美味しさを、そしてタケウチでしか食べれないようなプリンの味を表現するのか。まず第1に、メインの食材の卵と牛乳はとても大切です。若い人には本物の味と新しさを感じる、そしてお年寄りの方には懐かしさを感じることの出来るような、昔ながらの味を持つ卵と牛乳を選びます。
そして第2にキャラメル。タケウチのキャラメルは真っ黒です。とても苦く仕上げています。「苦味」と「甘味」。この相対している味覚が実はとても大切で、プリンの美味しさの1つです。その苦味と甘味のバランスはとても繊細なので、キャラメルの焦がし具合の見極めにはいつも緊張しています。苦味が甘味を引き立て、甘味が苦味を引き立てる…。これがプリンを飽きさせない美味しさの1つです。
そして第3に、火の通し具合です。ここでは火のしっかり通った卵の美味しさと、それでいてあのプリン特有のプリンップリンッとした食感を表現したいので、余熱まで計算に入れて火を通していきます。どこにでもあって、食べ親しんでいるデザートだからこそ、オリジナリティのある美味しさを表現するのは難しいですが、それが表現できれば驚きの美味しさを持つプリンが出来上がるのです。と、こんな理屈っぽいことを考えながら、毎日お料理しているタケウチです。
竹内さんのホームページアドレスはhttp://www3.ocn.ne.jp/~takechef/
写真=バニラの鞘(さや)。この中にあのプリンの香りの元となる種が入っていてそれがいわゆる「バニラビーンズ」です
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